妻のお腹の子をかわいい、と言ったら笑われた
どうやら東京で子育てデビューすることになりそうだ。
私も妻も地方出身者。彼女とは付き合って12年、結婚して3年目。私はうつの治療中だ。
そんな渦中に、子供を授かった。
妻の懐妊がわかった時には既に安定期だったこともあり、出産予定日まであと5か月もない。
お腹の子には、妻のお腹ごしに『長いこと存在に気づいてなくて、ほったらかしてごめん』と言っておいた。
ともあれ、初産である。
わからないことだらけである。
なにせ、あと5か月なのである。
決めること、準備することは盛りだくさん。
そして、自然の摂理は待ってはくれない。
ひとまず、妻は『里帰り出産する』という決断をくだした。
私もそれには大賛成である。
東京には身よりもおらず、子育て経験者の友人も少ない。その点、義母は3人の子供を産み育てたエキスパートである。田舎に帰って親元で過ごし、いざという時に頼れる身内がいたほうがいいだろう。
一方、そうなると、新米パパ(予備軍)の私はできることが少ない。
そもそも『密』を避けるため、産婦人科への通院も妻一人で来ること、付き添い禁止、というお達しが出ている。私としてみれば、おあずけをくらった気分だ。
テレビで見たことがあるシチュエーション…お医者さんが妻のお腹にエコーの機械を当てながら『あ、こっちが頭ですねー』『手指もしっかりしてますね』『母子ともに健康です』みたいな説明をしてくれ、はじめて見る我が子の映像に感動する…と期待していたのだが、そういう体験をすることは、このご時世、できないようだ。
かわりに、USBフラッシュメモリに動画を収めてもらい、自宅で再生しながら妻に開設してもらうことになった。
動画の中で、3Dイメージで映し出された我が子は、胎児ながら、顎の輪郭がすらっとしていて可愛らしい。口がパクパクと動き、じつにイノセントである。妻にそう伝えたら、『親バカ、早すぎ!』と笑われた。こんなのも良い思い出になっていくのだろうか。
さて、やることは盛りだくさんである。
妻とともに急遽マタニティやベビー用品を買ったり、妊婦によいとされる食材を調べたりしている。妻の健康は大前提である。
里帰り先と、東京に帰ってきた後のこととを、両方考えねばならない。
保育園の受け入れが可能かも未知数だ。
国や自治体からの支援制度なども、調べをつけておきたい。
部屋のベビースペースも確保しておかなくては。
将来のイベントや進学のために、資産のやりくりも見直す必要があるだろう。
せいぜい私の知恵の及ぶ限りのことを準備して、数か月後に東京においでになる新しい家族を、おもてなししようと思う。